京町家をビジネスの友として

町家の活用 2022.07.24

私が京町家の存在をビジネスの対象として本格的に認識しはじめたのは2004年(平成16年)4月から始まった、京町家を不動産証券化手法を用いて保全利活用しようという事業のスタートの頃でした。

私の会社は宅地建物取引業を始めて48年になりますが、当時この仕事を伸ばして いく為には仲介だけでなく不動産コンサルティングの視点からの業務展開が必要という共通認識をもった有志が、2003年10月に(一社)京都府不動産コンサルティング協会を立ち上げました。活動の柱として注目した証券化という金融手法は米国から持ち込まれたばかりで教科書もなく手探りの状態でしたが、町家利活用の為には金融面からのアプローチも必要とした私達の呼びかけに官公学金と各界専門職の皆さんより賛同をいただき、京町家証券化事業研究会という推進母体を発足させることが出来ました。

京都市やまちセンをはじめとする研究会参画の皆様にご協力をいただいて事業推進に努め、六角新町・東山安井・新宮川町の3戸の町家を苦労して取得しました。不動産証券化とは一般の方からお金を集め、不動産を取得し改修して賃貸し、家賃を配当にあてるという仕組ですが事業実施には近畿財務局の認可が必要であり、それはそれは筆舌にあらわしがたい難行苦行となりました。認可後のお金集め(出資募集)にもうひと山あり、2010年10月に3戸の売却益で最終配当を実施、財務局へ終了報告し全てを終えた時は大きく安堵したことを鮮明に覚えています。ちなみに苦労を共にした協会の会友は井上誠二(建都住宅販売)、西村孝平(八清)、吉田光一(フラット・エージェンシー)と私の4者でした。

私たちの情熱は枯れることなく、次に荷の軽いと言われる管理信託手法に挑戦し、先例により京町家管理信託事業研究会を推進母体として北区紫竹、南区京都駅南口の町家と連続して取り組み、大阪府不動産コンサルティング協会会員の信託会社に財務局対応を依頼し、3物件の改修利活用を実現しました。

2021年8月に京都市もサブリース手法により京町家賃貸モデル事業として実施されました。中京区壬生の町家を京都市が借り上げこれを公募事業者に転貸し、同事業者が改修賃貸して長期間の賃料で改修費を回収するという仕組です。この事業者も協会の会員で、問題の資金調達はクラウドファンンディングという現代的なシステムを採用しました。

この様に町家(空き家)の利活用には改修が欠かせません。経験からは数百万円から数千万円を超える工事費が必要となり、利活用でなく解体に向かう大きな理由となっています。多額の工事費の調達は中小の不動産業者にとって難関ですが、私はこれからも不動産と金融の融合したシステムを追求し組織的な対応によりハードルをクリアーしてまいります。
これが、青少年時代に町家で育った私のライフワークであろうと思っています。

      (一社)京都府不動産コンサルティング協会 元会長                  株式会社都ハウジング 代表取締役社主

岡本 秀巳

 

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